俺様社長と極甘オフィス
「いつの間にそんな技を覚えたわけ?」
「技ってなんですか?」
社長はそれには答えてくれなかった。自分の頭をやや乱暴に掻いて、しばらくなにかを言いよどむ。次に出された声は思ったよりも力なかった。
「だから、嫌だったんだ。俺のいないところで藤野が誰かをヘリに乗せるの。俺だって最近、藤野とデートしていないのに」
「いつも言っていますが、その言い方は正しくないと思います」
デート、というのはなんてことない。社長とふたりでヘリに乗ることを指す。夜景観賞のためのモデルコースや時間帯、ヘリコプター内でのサービスについて、色々と会議した結果、それを実践してみる必要がある。
それらは様々な分野のスタッフを乗せて、実際に登場したところで、あれこれ改善案を出したりするのだが、それとは別に、社長はなにかと上手い言い訳を作って自分だけがヘリに乗る機会を作ってくる。
そのとき、社長はいつも「デートしよう」と誘ってくるので、私はもうその言葉にいちいち反応しなくなった。
「そもそも、誰であろうと会社の要望と必要があれば、ヘリを操縦するのが、私の仕事です」
念押しするように言うと、社長は口を尖らせた。
「分かっているよ。でも操縦するときは藤野は眼鏡もかけていないし、私服だし、いつもよりずっと綺麗だし」
「はい?」
さすがに突っ込まざるを得なかった。綺麗、だなんて私とは程遠い形容詞だと思うのだが。社長の美意識は謎だ。それとも私が一応、女性だから気を遣っているのか。
「技ってなんですか?」
社長はそれには答えてくれなかった。自分の頭をやや乱暴に掻いて、しばらくなにかを言いよどむ。次に出された声は思ったよりも力なかった。
「だから、嫌だったんだ。俺のいないところで藤野が誰かをヘリに乗せるの。俺だって最近、藤野とデートしていないのに」
「いつも言っていますが、その言い方は正しくないと思います」
デート、というのはなんてことない。社長とふたりでヘリに乗ることを指す。夜景観賞のためのモデルコースや時間帯、ヘリコプター内でのサービスについて、色々と会議した結果、それを実践してみる必要がある。
それらは様々な分野のスタッフを乗せて、実際に登場したところで、あれこれ改善案を出したりするのだが、それとは別に、社長はなにかと上手い言い訳を作って自分だけがヘリに乗る機会を作ってくる。
そのとき、社長はいつも「デートしよう」と誘ってくるので、私はもうその言葉にいちいち反応しなくなった。
「そもそも、誰であろうと会社の要望と必要があれば、ヘリを操縦するのが、私の仕事です」
念押しするように言うと、社長は口を尖らせた。
「分かっているよ。でも操縦するときは藤野は眼鏡もかけていないし、私服だし、いつもよりずっと綺麗だし」
「はい?」
さすがに突っ込まざるを得なかった。綺麗、だなんて私とは程遠い形容詞だと思うのだが。社長の美意識は謎だ。それとも私が一応、女性だから気を遣っているのか。