俺様社長と極甘オフィス
『数字が好きだったよ』
『洒落好きというか』
『ちょっとした遊び心だ』
五十五階建てのビルの屋上……。
「社長、すみません、失礼します」
弾かれたように社長側に回り込むと、私はキャスター付きの椅子に座っている社長の隣に体を密着させ、パソコン画面をのぞき込む。そこには漢字で表す桁数一覧が記されており、文字通り「阿僧祇」もあった。
それを確認してからマウスを奪う形で拝借すると、画面をスクロールさせた。緊張しながらお目当ての箇所を探す。そして、私はある箇所を目にして瞠目する。
「もしかして……っ!?」
違うことに驚き、急いですぐに背筋を正してその場から距離をとる。確かめるように私は自分の頬に手を添えた。
なんだか今、頬に唇の感触があったような。それが現実だとすれば、犯人はどう考えても、この人しかいないわけで……。
「なに、なさるんですか?」
自分でも驚くほど冷静に尋ねられた。そんな私を社長はじっと私を見上げてくる、真顔で。
「藤野がいきなり近づいてくるから」
「昼休みとはいえ、一応仕事中ですよ?」
「え、なに? プライベートなら許してくれた?」
社長の切り返しに頭が痛くなる。もういい。これくらいで動揺していたらこの人の秘書は務められない。私は長く深い息を吐いた。
「で、どうした?」
真面目な声で訊いてくるので、私は少しだけなんて言うか迷ったが、ややあっておもむろに口を開いた。
「パスワードで試したい言葉が見つかりました」
『洒落好きというか』
『ちょっとした遊び心だ』
五十五階建てのビルの屋上……。
「社長、すみません、失礼します」
弾かれたように社長側に回り込むと、私はキャスター付きの椅子に座っている社長の隣に体を密着させ、パソコン画面をのぞき込む。そこには漢字で表す桁数一覧が記されており、文字通り「阿僧祇」もあった。
それを確認してからマウスを奪う形で拝借すると、画面をスクロールさせた。緊張しながらお目当ての箇所を探す。そして、私はある箇所を目にして瞠目する。
「もしかして……っ!?」
違うことに驚き、急いですぐに背筋を正してその場から距離をとる。確かめるように私は自分の頬に手を添えた。
なんだか今、頬に唇の感触があったような。それが現実だとすれば、犯人はどう考えても、この人しかいないわけで……。
「なに、なさるんですか?」
自分でも驚くほど冷静に尋ねられた。そんな私を社長はじっと私を見上げてくる、真顔で。
「藤野がいきなり近づいてくるから」
「昼休みとはいえ、一応仕事中ですよ?」
「え、なに? プライベートなら許してくれた?」
社長の切り返しに頭が痛くなる。もういい。これくらいで動揺していたらこの人の秘書は務められない。私は長く深い息を吐いた。
「で、どうした?」
真面目な声で訊いてくるので、私は少しだけなんて言うか迷ったが、ややあっておもむろに口を開いた。
「パスワードで試したい言葉が見つかりました」