俺様社長と極甘オフィス
『いやぁ、それにしても助かった。藤野くんがなにか口添えしてくれたのかな?』
私は目をぱちくりとさせる。なんのことか理解できずにいると正一氏が続けた。
『知り合いの娘さんとお見合いしてくれって話。最初はかなり渋ってたけれど、急に引き受けてくれたから、てっきり藤野くんが後押ししてくれたのかと』
思わぬ話の展開に私は耳を疑った。しかしそれを悟られぬように冷静に返す。
「いえ」
『そうか。まぁ、なにはともあれよかった。よろしく伝えておいてくれ』
「はい」
電話が切れたあと、しばらく私はそのまま動けなかった。社長が来週にお見合いするなんて、そんな話初耳だ。
過去にもお見合いを勧められたことはいくらでもあり、実際に取引先の重鎮のご令嬢と会ったこともある。それを社長はいつも愚痴混じりに、私に報告してくれていた。
断る前提の言い草で、ときには私にフォローさせることだってあった。けれど、今回は違うのだ。
そもそも仕事のことでもないのだから、いちいち秘書である私に報告することでもない。頭では分かっているのに、なにをこんなにショックを受けているのか。
それに今回はどういうわけか、最初は渋っていたのに、途中からお見合いに前向きになったようだし。どういう風の吹き回しだろう。
『もっと恋人など、心を寄り添える人に甘えてください』
自分の告げた言葉を思い出す。もしかして社長はあれを真面目に捉えたのか、捉えられたのか。なんだか胸の奥がズキズキと痛み、勝手に涙が滲みそうになるのを必死で堪える。
私は目をぱちくりとさせる。なんのことか理解できずにいると正一氏が続けた。
『知り合いの娘さんとお見合いしてくれって話。最初はかなり渋ってたけれど、急に引き受けてくれたから、てっきり藤野くんが後押ししてくれたのかと』
思わぬ話の展開に私は耳を疑った。しかしそれを悟られぬように冷静に返す。
「いえ」
『そうか。まぁ、なにはともあれよかった。よろしく伝えておいてくれ』
「はい」
電話が切れたあと、しばらく私はそのまま動けなかった。社長が来週にお見合いするなんて、そんな話初耳だ。
過去にもお見合いを勧められたことはいくらでもあり、実際に取引先の重鎮のご令嬢と会ったこともある。それを社長はいつも愚痴混じりに、私に報告してくれていた。
断る前提の言い草で、ときには私にフォローさせることだってあった。けれど、今回は違うのだ。
そもそも仕事のことでもないのだから、いちいち秘書である私に報告することでもない。頭では分かっているのに、なにをこんなにショックを受けているのか。
それに今回はどういうわけか、最初は渋っていたのに、途中からお見合いに前向きになったようだし。どういう風の吹き回しだろう。
『もっと恋人など、心を寄り添える人に甘えてください』
自分の告げた言葉を思い出す。もしかして社長はあれを真面目に捉えたのか、捉えられたのか。なんだか胸の奥がズキズキと痛み、勝手に涙が滲みそうになるのを必死で堪える。