俺様社長と極甘オフィス
「来週の土曜日……なにか、あるんですか?」
ぎこちなく尋ねた質問は秘書としての域を越えている。プライベートのことにまで口を出す権利なんて私にはないのに。
それでも私はどこかで期待していた。いつもみたいに『聞いてくれよ、藤野。それがさー』なんて社長から話してくれるのを。けれども、
「たいした用事じゃないよ。ちょっとプライベートなことで」
濁して返され、それがとんでもない拒絶のように感じた。これ以上は踏み込んでくるな、と言われた気さえした。だから大袈裟に私は返してしまう。
「差し出がましいことを訊きました、申し訳ありません」
「そんな謝らなくてもいいよ」
顔を見られたくなくて深々と頭を下げる。なんだか泣きそうだ、どうしよう。苦笑していた社長は、わざとらしく明るい声で話題を変えてきた。
「そういえばさ、藤野にひとつお願いがあるんだけれど。来週のどこかでヘリを出せない? ほら、ホテル利用者の裕福層をターゲットにヘリで夜景を楽しむプランが進行中だろ? そのモニターという形で」
「上の許可さえいただけるなら私はかまいませんよ。しかし、どうされたんです?」
この質問は正当なはずだ。なんたって仕事の話なのだから。境界線を意識しようと懸命な私に対して社長はあっけらかんと答えた。
「ちょっと“じょういち”に頼まれてさ。ひとりなら承諾しないけど、どうしてもヘリに乗せてあげたい人がいるって言うもんだから」
じょういちが誰かと言うことは、尋ね返したりはしない。前も聞いたことがある、社長の異母弟である倉木さんのことだ。
ぎこちなく尋ねた質問は秘書としての域を越えている。プライベートのことにまで口を出す権利なんて私にはないのに。
それでも私はどこかで期待していた。いつもみたいに『聞いてくれよ、藤野。それがさー』なんて社長から話してくれるのを。けれども、
「たいした用事じゃないよ。ちょっとプライベートなことで」
濁して返され、それがとんでもない拒絶のように感じた。これ以上は踏み込んでくるな、と言われた気さえした。だから大袈裟に私は返してしまう。
「差し出がましいことを訊きました、申し訳ありません」
「そんな謝らなくてもいいよ」
顔を見られたくなくて深々と頭を下げる。なんだか泣きそうだ、どうしよう。苦笑していた社長は、わざとらしく明るい声で話題を変えてきた。
「そういえばさ、藤野にひとつお願いがあるんだけれど。来週のどこかでヘリを出せない? ほら、ホテル利用者の裕福層をターゲットにヘリで夜景を楽しむプランが進行中だろ? そのモニターという形で」
「上の許可さえいただけるなら私はかまいませんよ。しかし、どうされたんです?」
この質問は正当なはずだ。なんたって仕事の話なのだから。境界線を意識しようと懸命な私に対して社長はあっけらかんと答えた。
「ちょっと“じょういち”に頼まれてさ。ひとりなら承諾しないけど、どうしてもヘリに乗せてあげたい人がいるって言うもんだから」
じょういちが誰かと言うことは、尋ね返したりはしない。前も聞いたことがある、社長の異母弟である倉木さんのことだ。