俺様社長と極甘オフィス
結局、倉木さんと連絡を取り合い、水曜日にヘリを飛ばすことになった。部屋を出る際に社長に七割でいいと伝えておいてくれ、なんて言われたが、身内にまで使用料を求めるなんて。
『ヘリの使用料じゃないよ。大事な藤野を貸すんだから、これぐらい当たり前だろ?』
いつもは意識しないのに、私は心臓が大きく跳ねた。そして、なんだか物悲しくなった。分からない。照れたり、嬉しくなるならまだしも、どうしてこんな気持ちになるのか。
とにかく気持ちを振り払って私はスーツを着替えてから屋上へ急ぐ。
基地から操縦してきたヘリを一度確認し、私は改めて、屋上に出るドアの上の方に書かれている阿僧祇の文字に目を走らせた。
まだ五十二階のドアを開けるパスワードは見つけられていない。文字を数字に変えたり、アナグラムなど色々試してはいるが、どれも結果は残念に終わっている。
そもそも前一氏が考えたものなら、そんな複雑なものではないはずだ。彼の好みを辿って、懸命に頭を働かせる。
そんなときエレベーターがついた音がしたので、私はそちらに向き直った。
倉木さんが連れていたのは、やはりこの前ラウンジで一緒にいた女性だった。恋人なのか、なんて野暮な質問はしない。
その代わり、一応社長の伝言を素直に伝えると、倉木さんはあからさまに嫌そうな顔をした。社長も、もっと素直になればいいのに。
そして十五分ほどのフライトはあっという間に終わりを迎え、初めてヘリコプターに乗ったという桜田(さくらだ)さんは、すごく喜んでくれた。
そこまで喜んでくれると、やはり操縦士としても嬉しい。対する倉木さんは顔色があまりよくないみたいだった。
どうやら、彼はこういった地に足がつかない高い系が駄目らしい。いつもの余裕ある倉木さんからは想像もつかないような姿だったが、そこまでして彼女のためにこのフライトを企画したのだと思うとなんだか微笑ましかった。
用が済んだら、私はお邪魔なだけなので、さっさとその場を後にすることにする。少しだけでもパスワードの候補を出しておかなくては。
『ヘリの使用料じゃないよ。大事な藤野を貸すんだから、これぐらい当たり前だろ?』
いつもは意識しないのに、私は心臓が大きく跳ねた。そして、なんだか物悲しくなった。分からない。照れたり、嬉しくなるならまだしも、どうしてこんな気持ちになるのか。
とにかく気持ちを振り払って私はスーツを着替えてから屋上へ急ぐ。
基地から操縦してきたヘリを一度確認し、私は改めて、屋上に出るドアの上の方に書かれている阿僧祇の文字に目を走らせた。
まだ五十二階のドアを開けるパスワードは見つけられていない。文字を数字に変えたり、アナグラムなど色々試してはいるが、どれも結果は残念に終わっている。
そもそも前一氏が考えたものなら、そんな複雑なものではないはずだ。彼の好みを辿って、懸命に頭を働かせる。
そんなときエレベーターがついた音がしたので、私はそちらに向き直った。
倉木さんが連れていたのは、やはりこの前ラウンジで一緒にいた女性だった。恋人なのか、なんて野暮な質問はしない。
その代わり、一応社長の伝言を素直に伝えると、倉木さんはあからさまに嫌そうな顔をした。社長も、もっと素直になればいいのに。
そして十五分ほどのフライトはあっという間に終わりを迎え、初めてヘリコプターに乗ったという桜田(さくらだ)さんは、すごく喜んでくれた。
そこまで喜んでくれると、やはり操縦士としても嬉しい。対する倉木さんは顔色があまりよくないみたいだった。
どうやら、彼はこういった地に足がつかない高い系が駄目らしい。いつもの余裕ある倉木さんからは想像もつかないような姿だったが、そこまでして彼女のためにこのフライトを企画したのだと思うとなんだか微笑ましかった。
用が済んだら、私はお邪魔なだけなので、さっさとその場を後にすることにする。少しだけでもパスワードの候補を出しておかなくては。