ある夜のお話。
私を抱き寄せている君の腕に、力が入るのを感じた。
その時君の顔は、私の顔に寝息がかかるくらい
近くにあった。
少しずつ、少しずつ君の顔が近づいてくるのが
分かった。
…そして、君の唇が、私の唇に触れた。
君の寝息が聞こえる。
君は本当に寝ているのだろうか。
眠っている、という体で貫きたい私は、それを確認する術を持ち合わせていなかった。
唇は、まだ触れている。
私が何かのアクションを取らなければ、朝までこのままではないだろうか。
そう感じてしまうほど、自然で違和感のないものだった。