【完】恋愛エゴイズム
「…チッ。なんなんだよ。」
 
 
これでも、我慢強く待っていると思う。
何度も自分から言ってしまいそうになったけど、その度にぐっと堪えてきた。
 
 
聞きたいんだよ、お前の声で。
言わせたいんだよ、お前から…。
 
 
そんな気持ちを知りもしないこいつは…陸は、益々捉え所なく俺の隣で過ごしている。
 
 
「あー…。そういやもうすぐ席替えか。担任の意向でも、こればっかりは面倒くせぇな。なぁ?陸?」
 
「ん。だねぇ…」
 
「お前、ここんとこヘンだぞ?腑抜けた面ばっかしやがって。何かあったのか…?」
 
「…んーん。何もないよ〜?」
 
「今、間があっただろ?なんか言いたいことがあるんじゃねぇのか?」
 
「…嫌だなー…」
 
「は?」
 
「……席替え」
 
「なんで?」
 
「…なんでも」
 
「オレと離れたくないってか?」
 
「……ん」
 
「そうかよ。で、その理由を聞かせてもらおうじゃねぇの」
 
「…それは…」
 
「それは?」
 
 
これが、チャンスだと思った。
こいつから先に「好き」だと言わせるチャンスだと。
だがしかし、それをブチ壊すかのように、こいつはクラスの女の声に耳を傾けた。
 
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