【完】恋愛エゴイズム
ぎゅうっと瞳を瞑って、そのまま迫って来る顔をなんとか避けようとしていたら…。
 

「おい!人の部室の前で何してやがる!邪魔だ!どけ!」
 
 
ドカッ
 
 
そんな声と音と共に、今まで拘束されていた手が解かれた。
 
「…へ…?」
 
「うぜぇヤローだな。神聖な部室前を汚すようなことしやがって。あぁ?ケガしたくなけりゃ、とっとと退けよ!」

「ひっ…!」
 

その人のドスの利いた声と凄んだ表情に、あたしに迫っていた男の子は小さく悲鳴を上げて逃げていく。
それをただ呆然と眺めていたあたしの顔を、その人はぐっと覗き込んできて。
 
「おい。お前、大丈夫か?顔、死人みたいだぞ?」
 
「……っ」
 
そう言われて初めて、とても怖い思いをしたんだと、感じた。
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