恋愛上手な   彼の誤算
デスク周りできゃっきゃと話す三人をよそにパソコンに向かい始めた。毎回気にしていたらきりがない。
ちらと視線を遣ったデスクの片隅にあるマグカップの中身はすでになく、空のそれを手にとって席を立った。

午後が始まって間もない時間だからか給湯室に人はおらず、共用のケトルがお湯を沸かすのをぼーっと眺めていた。

こういう一人の時間にふと考える。このままずっと恋愛ができないままだったらどうしよう。
学生の頃は良かった。女子高だと彼氏がいない子もそこそこいたし、大学に入ったらみんな恋人ができるものだって漠然と思っていた。

でも実際は気軽なコミュニケーションにすら緊張しすぎて挙動不審になる自分をどうにもできなかった。始めはそれでも頑張ろうとしたものの、不自然な態度のせいで変に気を持たれていると勘違いされることが何度かあり、知らない女の子に「彼氏を勘違いさせないで」と言われたことで一度心が折れた。

それから二十歳までにできたらいい、社会人になったら、二十五歳になったら、そう思いながらどんどん年齢だけを重ねていく。
もしかしてこれから先一生恋人なんてできないんじゃないだろうか、なんてネガティブな妄想が膨らんでは憂鬱な気分に襲われることが多くなっていた。
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