プラス1℃の恋人
 青羽は熱中症をよく起こす。

 小学生のころは夏場の朝礼で真っ先に倒れ、保健室の常連だった。

 自宅の風呂でものぼせてしまい、湯船につかるのは5分が限度。
 いつも手すりにつかまりながら、なんとかバスルームを抜け出す。

 温泉旅行に行っても、楽しみは飲み食いすることだけ。
 露天風呂から周りの景色を一望したら、さっさと浴場を出る。

「もったいない」と同行した女友達や家族からは呆れられるが、笑って聞き流している。
 過去に一度、頑張って長時間湯船につかり、大浴場で派手に倒れたことがあるからだ。


 体温調節がうまくできないのが、のぼせ体質の原因だ。
 汗をあまりかかないので、体内に熱がこもってしまうのだ。
 専門用語だと『うつ熱』と言うらしい。

「更年期障害ってそんな感じみたいだよ」
 と実弟は言う。

 失礼な。
 25歳、自分ではまだまだ若いと思っているのに。

 仕事中は、パソコンのUSBにつないだ小さなファンを標準装備。衣服も〝ひんやり〟とか〝清涼感UP〟と書かれたものを選ぶようにしている。
 そして、いよいよ限界というときには、病院で点滴を受けるという最終手段に出る。
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