プラス1℃の恋人
千坂はとても優しかった。
小さいころ、具合が悪くて学校を休むと、いつもは放任主義の母親がつきっきりで看病してくれた。
そのときの母のように、千坂は青羽のことを優しくいたわってくれた。
会社を出てタクシーに乗り込んだ瞬間、青羽は強烈な眠気に襲われた。
やはり病み上がりで疲れていたらしい。
「着いたら起こすから、寝てていいぞ」
そっと千坂の肩にもたれてみる。
すると大きな手で額を撫で、濡れたタオルを首筋にあててくれた。
青羽は、ナイトに守られているお姫様の気分だった。
……今思い出しても、顔が火照る。
「でね、行きつけの定食屋に連れて行ってもらったの。渋い雰囲気のところだったんだけど、味は最高でね。『夏バテにはこれが効くんだ』って、一緒にネバネバ丼を食べたの~」
夢見心地の青羽の横で、桃子と紫音は「ネバネバ丼……?」と微妙な顔をする。
食事をしたあと、青羽のアパートまで送ってくれた千坂。
「寄っていきますか?」と勇気を出して誘ってみたけれど、「アホなこと言ってないで、さっさと休め」と額を小突かれた。
そして少し膝を曲げて目線を同じ高さにし、「顔色、よくなったな」と極上の笑顔を見せてくれたのだ。
その瞬間、青羽のハートは完璧に持っていかれた。
桃子と紫音は「いいな、いいな~」とニヤニヤしながら青羽を見ている。
ふたりともいまは彼氏がいないので、こんなふうにノロけるのもどうかと思ったが、今日くらいはヒロインでいたい。
小さいころ、具合が悪くて学校を休むと、いつもは放任主義の母親がつきっきりで看病してくれた。
そのときの母のように、千坂は青羽のことを優しくいたわってくれた。
会社を出てタクシーに乗り込んだ瞬間、青羽は強烈な眠気に襲われた。
やはり病み上がりで疲れていたらしい。
「着いたら起こすから、寝てていいぞ」
そっと千坂の肩にもたれてみる。
すると大きな手で額を撫で、濡れたタオルを首筋にあててくれた。
青羽は、ナイトに守られているお姫様の気分だった。
……今思い出しても、顔が火照る。
「でね、行きつけの定食屋に連れて行ってもらったの。渋い雰囲気のところだったんだけど、味は最高でね。『夏バテにはこれが効くんだ』って、一緒にネバネバ丼を食べたの~」
夢見心地の青羽の横で、桃子と紫音は「ネバネバ丼……?」と微妙な顔をする。
食事をしたあと、青羽のアパートまで送ってくれた千坂。
「寄っていきますか?」と勇気を出して誘ってみたけれど、「アホなこと言ってないで、さっさと休め」と額を小突かれた。
そして少し膝を曲げて目線を同じ高さにし、「顔色、よくなったな」と極上の笑顔を見せてくれたのだ。
その瞬間、青羽のハートは完璧に持っていかれた。
桃子と紫音は「いいな、いいな~」とニヤニヤしながら青羽を見ている。
ふたりともいまは彼氏がいないので、こんなふうにノロけるのもどうかと思ったが、今日くらいはヒロインでいたい。