プラス1℃の恋人
「主任、ずっと聞きたいことがあって」
「ん? なんだ?」
「一緒に残業した日に、ふたりのあいだであったことです」
すると千坂は、一瞬ぎくっとした表情を見せ、目を泳がせた。
だがすぐに、にっこり笑って、なにごともないように聞き返してきた。
「ああ、あの日のことか。それがどうかしたか?」
「どうして私は下着姿で男子更衣室にいたんでしょうか」
ストレートに聞いてみる。
すると千坂は、「いや、その……あれはだな……」とあからさまに動揺しはじめた。
怪しい。これはやはり、千坂が犯人だな。
青羽は確信した。
「不可抗力だったんだよ。途中までは、おまえが勝手に脱いだんだし」
節電モードに入ったオフィスは千坂と青羽しかいなかったので、思い切って上着を脱ぎ、涼しい格好をすることにした。
それは青羽も覚えている。
「確かにブラウスとストッキングは自分で脱いだ記憶があります。でもその先のことを全然思い出せなくて」
千坂は気まずそうに視線をそらす。
「忘れてるなら、思い出さないほうがいいぞ」
「そういうわけにはいきません。記憶がないなんて、怖いじゃないですか」
「まぁ確かにそうだが、聞いたら絶対におまえは後悔する」
「大丈夫です。絶対に後悔なんてしません」
「そうか? じゃ、言うぞ」
「はい」
心の準備はできている。
もしふたりのあいだになにがおきていても、絶対に後悔しない。
「あの日、商品説明の英訳をおまえに頼んだだろう? おまえは熱中症でふらふらになりながらも、泣きごとを言わずに頑張った。まあ、内容はひどいものだったが」
「すみません……」
まあいい、と千坂は少しだけ上司の顔に戻る。
「いつものおまえらしからぬミスだな、と思ったが、よく見たら体調も悪そうだ。仕上げは俺がやることにして、おまえのことは帰らせることにした。そしたら……」
いきなり抱きつかれたんだよ。
千坂は困ったようにそう言った。
「ん? なんだ?」
「一緒に残業した日に、ふたりのあいだであったことです」
すると千坂は、一瞬ぎくっとした表情を見せ、目を泳がせた。
だがすぐに、にっこり笑って、なにごともないように聞き返してきた。
「ああ、あの日のことか。それがどうかしたか?」
「どうして私は下着姿で男子更衣室にいたんでしょうか」
ストレートに聞いてみる。
すると千坂は、「いや、その……あれはだな……」とあからさまに動揺しはじめた。
怪しい。これはやはり、千坂が犯人だな。
青羽は確信した。
「不可抗力だったんだよ。途中までは、おまえが勝手に脱いだんだし」
節電モードに入ったオフィスは千坂と青羽しかいなかったので、思い切って上着を脱ぎ、涼しい格好をすることにした。
それは青羽も覚えている。
「確かにブラウスとストッキングは自分で脱いだ記憶があります。でもその先のことを全然思い出せなくて」
千坂は気まずそうに視線をそらす。
「忘れてるなら、思い出さないほうがいいぞ」
「そういうわけにはいきません。記憶がないなんて、怖いじゃないですか」
「まぁ確かにそうだが、聞いたら絶対におまえは後悔する」
「大丈夫です。絶対に後悔なんてしません」
「そうか? じゃ、言うぞ」
「はい」
心の準備はできている。
もしふたりのあいだになにがおきていても、絶対に後悔しない。
「あの日、商品説明の英訳をおまえに頼んだだろう? おまえは熱中症でふらふらになりながらも、泣きごとを言わずに頑張った。まあ、内容はひどいものだったが」
「すみません……」
まあいい、と千坂は少しだけ上司の顔に戻る。
「いつものおまえらしからぬミスだな、と思ったが、よく見たら体調も悪そうだ。仕上げは俺がやることにして、おまえのことは帰らせることにした。そしたら……」
いきなり抱きつかれたんだよ。
千坂は困ったようにそう言った。