プラス1℃の恋人
番外編
千坂拓亮のながい一日(前編)
マーケティング部主任である千坂拓亮《ちさかたくま》は、B.C.square TOKYOの20階にあるオフィスから、ぼんやり外を眺めていた。
駅前のシティホテルが見える。
レンガ色の建物の屋上にそびえ立つヤシの木。木製ラティスの上から少しだけ見える白いパラソル。
つい先日、屋上でビアガーデンが始まったらしい。
――ビール飲みてぇ。
「駅前のホテルでやってる南国風ビアガーデン、よかったですよ。ビールはもちろんですけど、料理がまた絶品で」
営業の二階堂がそんなことを言っていた。
家で飲む缶や瓶のビールもいいが、やはり夏といえば夜風に吹かれながらジョッキで飲む生ビールだろう。
考えただけで、きりっとした炭酸を求めて喉がかわく。
日本各地の地ビールを流通販売するという仕事がら、千坂は年がら年中ビールのことばかり考えている。
パソコンのデスクトップはバドガールのきれいなおねえちゃんだし、ビール用のタンブラーにアイスコーヒーを注いで飲んでいる。
実家の犬の名前も、ホップとラガーだ。
でも悲しいことに、いまは仕事中だ。
ビアガーデンの白いパラソルを眺めながら、麦とホップのうまい苦みを想像するしかできない。
駅前のシティホテルが見える。
レンガ色の建物の屋上にそびえ立つヤシの木。木製ラティスの上から少しだけ見える白いパラソル。
つい先日、屋上でビアガーデンが始まったらしい。
――ビール飲みてぇ。
「駅前のホテルでやってる南国風ビアガーデン、よかったですよ。ビールはもちろんですけど、料理がまた絶品で」
営業の二階堂がそんなことを言っていた。
家で飲む缶や瓶のビールもいいが、やはり夏といえば夜風に吹かれながらジョッキで飲む生ビールだろう。
考えただけで、きりっとした炭酸を求めて喉がかわく。
日本各地の地ビールを流通販売するという仕事がら、千坂は年がら年中ビールのことばかり考えている。
パソコンのデスクトップはバドガールのきれいなおねえちゃんだし、ビール用のタンブラーにアイスコーヒーを注いで飲んでいる。
実家の犬の名前も、ホップとラガーだ。
でも悲しいことに、いまは仕事中だ。
ビアガーデンの白いパラソルを眺めながら、麦とホップのうまい苦みを想像するしかできない。