強制両想い彼氏

「おい。何してんだお前は」


自分の席でぐったりと机に伏していたら、頭の上に聞き慣れた声が降ってきた。
顔を上げると、呆れた表情を浮かべて立っている永瀬くん。


「……何か用?」

「何か用じゃねーよ。次、移動教室。みんなもう行っちまったぞ」

「え!?」


慌てて周りを見渡せば、なるほど教室には私たち以外もう誰もいなかった。


「なんでもっと早く起こしてくれなかったの!!!」

「はあ!?何回も声かけたのに机に突っ伏して全部スルーしたのお前だろうが!!」


永瀬くんに怒られながら急いで教科書とノートを取り出す。
それを抱えて勢い良く立ち上がったら、突然目眩に襲われて、足元がふらついた。


「!?あっ……ぶね!」


倒れそうになった私の体を、永瀬くんがとっさに支えてくれた。
細身だと思ってたのに、回された腕はすごくしっかりしていて、無意識にドキドキしてしまう。


「気を付けろよ……」

「ごめん……」


永瀬くんは私の体に腕を回したまま、はあ、と大きく溜め息をついた。


「お前、昨日皐月と何かあったのか?」

「え!?な、なんで?」

「昨日ちょっと部活のことで伝えなきゃいけないことがあったから皐月に電話したんだけど、あいつ何回かけても出なかったんだよ。
んでおかしいと思って今日学校来てみりゃお前はそんな状態だし。
何もないっつー方が不自然だと思うけど?」


何も言い返せずに黙っていたら、永瀬くんは私の体に回している腕に力を込めた。
力強く引き寄せられて、思わず体が硬直する。


「無理に聞こうとは思わねーけど……何かあったらすぐ俺に言え」



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