強制両想い彼氏
パッと永瀬くんから体を離して、私は慌てて笑顔を作った。
「大丈夫!本当に何もないよ!」
永瀬くんは不満そうな顔をしてたけど、「そっか」と小さく呟いて長く息を吐いた。
教室を出て、2人で廊下を歩いていたら、不意に永瀬くんが口を開いた。
「お前さ、今日の放課後は何か予定あんの?」
「え?今日は特に何もないけど……」
そう正直に答えると、永瀬くんはニカッと歯を見せて笑った。
「ならみんなでカラオケ行こうぜ!クラスのやつは6人くらい来るし、他のクラスのやつも何人か来る予定なんだけど」
「なにそれ行く行く!!」
と、答えてすぐにハッと我に返った。
即答したものの、すぐに頭の中には皐月くんの顔がよぎる。
昨日少し永瀬くんの話をしただけで怒られたし、無断でカラオケなんか言ったら絶対怒るだろうなぁ……。
ケーキ屋さんで見た、苛立っている皐月くんのあの顔を思い出し、思わずぶるっと体が震えた。
「ねぇ、あ……あのさ、皐月くんも誘っていい?」
「皐月?」
私の提案を聞いた永瀬くんは、一瞬眉を寄せた。
「あー、まあいいけど」
「本当に!?ありがとう!」
「はーあ、お前はほんとに皐月皐月皐月皐月って。それどうにかなんないのかね」
呆れた様子の永瀬くんに苦笑いを返しつつ、皐月くんを誘っていいと言われたことへの安心と、久しぶりに行くカラオケへのわくわく感で、私の気持ちは一気に高揚していた。