強制両想い彼氏
家に着いて自分の部屋に戻ると、私はずっとほったらかしていた携帯に充電器を差した。
最後に携帯を開いたのはたしか、皐月くんに
今から帰るって連絡をした時。
永瀬くんと遊びながら帰ってきたから、あれからずいぶんと時間が空いてしまった。
電源を入れると、案の定皐月くんから何件か着信が入っていて、私は慌てて発信ボタンを押した。
無機質な呼び出し音が数コール鳴り響いた後、ガチャ、と回線が繋がる音がして、聞き慣れた綺麗な声が耳に入ってきた。
「もしもし?」
電話越しの皐月くんの声はいつもより少し低い気がした。
「あ……もしもし皐月くん?寝てた?」
「……なんで?」
「なんか、声低いし少しかすれてるから……」
「……ん、電話だからじゃない?別に寝てないよ」
だとしたらやっぱり怒ってるのかな。
「あの、皐月くんごめんなさい……。連絡遅くなっちゃって」
私がもごもごと謝り始めると、皐月くんは苛立ったように少しだけ声を荒げた。
「……あのさ、お前ってそんなに携帯見ないっけ?別にカラオケの真っ最中に頻繁に返信よこせって言ってるわけじゃないんだけど俺は」
「うん……」
「だからまぁ、カラオケ中は仕方ないにしても……今から帰るって言ってから何時間経ってると思ってんの?」
「ごめんなさい」
「で、何してたの?」
これは「永瀬くんに送ってもらうことになって、遊びながら帰ってた」って正直に言ったら多分大変なことになる絶対怒られる。
いけないって分かってるけどでも……。
「た、たまたま……中学の頃の同級生にばったり会っちゃって!!!それでっ、ちょっと……話してたら、盛り上がっちゃって、遅く……なっちゃった。ごめんなさい」
思わずとっさについた嘘。
皐月くんは「ふーん」と小さく声を漏らすと、しばらく何かを考えるように黙って、それからまた口を開いた。
「その同級生って女?それとも男?」
「お、女の子だよ!」
「そっか……」
皐月くんははあ、と大きく息を吐き出すと、少し安心したような声で「心配で死にそうだった」と呟いた。