強制両想い彼氏
震えが、止まらない。
悪いのは嘘をついた自分だけど、でも……。
「……どういうこと?」
皐月くんの体が近づいて来て、ビクッと肩が震えた。
言い訳することも、逃げ出すこともできなくて、怖くて怖くて黙って俯いていたら、皐月くんの冷たい手が私の頬に触れた。
恐る恐る顔を上げると、すぐ目の前に皐月くんの綺麗な顔があった。
でも、その表情は、意外にもすごく柔らかくて優しくて。
皐月くんは私の頭をぽんぽん撫でると、薄く微笑んだ。
「放課後、話し合おっか」
その頭の上に降ってきた声が優しすぎて、思わず小さく頷いたら、皐月くんはにこ、と綺麗に笑った。
「今日部活あるから、悪いんだけど待っててくれる?」
「うん、分かった」
「うん。じゃあ、放課後な」
そんな私たちの一部始終を見ていた永瀬くんは、訝しげな表情を浮かべていた。
「なんだなんだ?何かお前らあったの?ていうか俺、もしかしてマズイこと言っちまった……?」
「ううんなんでもない。永瀬くんいいから早く教室行こ」
早くその場を離れたくて、あたふたする永瀬くんの背中を押す。
少し歩いてからゆっくり後ろを振り返ると、皐月くんが未だに下駄箱の前からじっとこっちを見ていた。