強制両想い彼氏

「……いいっつったのに。お前ってホントお人好しだな」


私からプリントを受け取ると、永瀬くんは私の鼻をぎゅっと摘んだ。


「ふがっ!せ、せっかく人が親切に拾ってあげたのになにその言い方!」

「あー?ふがふが言われても分かんねーよ豚じゃねえんだから」

「じゃあ指離してよいつまで鼻摘んでんの息出来なふががっ」

「わーもうすげー豚」

「うるさい!!!!」


永瀬くんはゆっくり私の鼻から指を離した。

永瀬くんを見上げると、永瀬くんも私を見ていて目が合って。
数秒視線を絡ませた次の瞬間、私たちは同時に吹き出した。

誰もいない教室に、私たちの笑い声だけが響く。

最近までずっと口を聞いてなかったのがうそみたいに、私たちは笑い合った。


「やっぱり、お前と話さないとか………無理」


永瀬くんははあ、と大きく息を吐くと、眉を下げて困ったように小さく笑った。


私だって無理だよ。


本当は今までみたいにいっぱい話したい。
本当は今までみたいにいっぱい笑わせて欲しい。


私はちら、と目線を窓の外に向けた。


校庭には、まだサッカー部の姿がある。
まだ練習は終わってない。
皐月くんが戻ってくるまでまだ時間はありそう。


……少しだけ。


少しだけなら、話してもいいかな。




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