強制両想い彼氏
「永瀬くん、あの……お見舞い行かなくて、ごめん」
私のその言葉を聞いた永瀬くんは、一瞬驚いた顔をして、すぐに笑った。
「なに、そんなこと気にしてたの?」
「うん……」
「いいんだよお前は気にしなくて」
永瀬くんが、私の頭をぐしゃぐしゃ撫でる。
大人しく撫でられていたら、少し乱暴だった撫でる手が、ゆっくりと優しくなっていく。
永瀬くんは大事そうに私を撫でると、はあ、と長い息を吐いた。
「それに……見舞いに “行かなかった” じゃなくて、“行けなかった” だろ?」
「!」
「そりゃなぁ……あんな状態の皐月に脅されたら、他の男となんて怖くて接触できねーよな」
永瀬くんはそう言うと、それから心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「……大丈夫か?」
その優しい声で紡がれた一言に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
永瀬くんの方が大変なのに、なんで私の心配なんかしてくれるんだろう。
私が心配しなきゃいけない立場なのに、逆に心配してもらって申し訳なくて胸が痛い。
でも、嬉しくて嬉しくて、気付いたらぽろぽろ涙がこぼれ落ちた。
「大丈夫じゃねえんだな……。皐月に何された?」
「……」
「言えねえか。まあ無理に言わなくていい。……大体想像はつく」
永瀬くんは再び私の頭をそっと撫でると、小さく舌打ちをして眉を寄せた。
「あいつ……やっぱり許せねえ……」
本当に心の底から恨んでるのが分かる、怒りに歪んだ顔。
永瀬くんのこんな表情、初めて見た。