強制両想い彼氏
「会話はしてないんじゃなかった?」
「盗聴器なんて……信じられない……!こんなの……いつの間に……」
「信じられないのはお前だよ。約束は破るし嘘はつくし……」
皐月くんは盗聴器を床に叩きつけると、永瀬くんの声が流れるそれを、忌ま忌ましそうに勢い良く踏みつけて壊した。
それを見た瞬間、皐月くんが永瀬くんの脚を蹴った時の映像が頭の中でフラッシュバックして、恐怖で体が硬直する。
「で、どうすんの?」
「え?」
「あいつに俺と別れろって言われたんだろ。ほら、どうする?別れる?」
「っ……」
「守ってくれるらしいじゃん、良かったな」
皐月くんは私を掴んだまま、くく、と喉を鳴らして可笑しそうに笑い出した。
それがあまりに不気味で、嫌な汗がぶわっと噴き出す。
「あーあ……「守ってやる」とかさぁ……ほんと、笑っちまうよな……。「脚蹴られるようなへまはしない」って言った矢先に アレ なんだから……」
アレ、という曖昧な言葉に嫌な予感しかしなくて、思わず皐月くんの腕を掴み返した。
「アレってなに!?永瀬くんに何したの!?」
「……そういう永瀬を必死にかばうところが、殺したくなるくらいムカつくって言ってんだよ」
皐月くんは突然私の手を引いて、階段の方へ歩き出した。
いきなり引っ張られて痛かったけど、皐月くんはそんな痛がる私なんかお構い無しに廊下を進んでいく。