強制両想い彼氏
夕日が差し込み、オレンジ色に染まった階段の踊り場には、血の海に倒れる2人の少年と少女の姿。
それを見下ろしながら、ゆっくり一段一段階段を降りてくる少年は、刃物のように無表情だった。
「……死んじゃった?」
少年は少女の胸に耳を当てる。
「ああ、良かった生きてる」
少年は薄く感情無く微笑むと、倒れる少年に視線を移した。
「……こっちはさすがに死んだかな」
少年は蔑むような瞳で、徐々に大きく広がっていく赤黒い血溜まりを見回すと、長く息を吐き出した。
「……今、誰か呼んできてやるよ」
少年は、倒れている少年の頭を2、3度踏みつけた後、ゆっくりと背を向けて歩き出した。
誰もいない廊下に、少年の足音だけが響く。
階段の踊り場、その少年の足音が聞こえなくなった頃。
血溜まりに倒れていた少年の指が、ぴく、と動いた。
「……あい……つ……ころ……す」
消え入りそうな掠れ声で呟いた少年の血だらけの瞳は、隣に倒れる少女を見つめていた。
最後の力を振り絞って伸ばされた少年の指は、少女の頬を軽く撫でると、力尽きたように動かなくなった。