強制両想い彼氏
止まる歯車 〜皐月side〜
今日も空はどこまでも青い。
憎たらしいくらいに清々しい。
柔らかい風がふわっと吹き抜けて、前髪を揺らした。
風に乗ってあいつの笑い声が聞こえた気がして振り返ったけど、もちろん誰もいなかった。
放課後の屋上には、俺以外の人影はない。
校庭が見渡せる日当たりのいい場所に、俺はゆっくり腰を下ろした。
よくここであいつと昼休みを過ごした。
一緒に弁当を食べて、一緒に音楽を聴いて、一緒にうとうとして、一緒に他愛のない話をして、たまにキスして、少し怒られたりした。
思い出して、溜め息が出る。
あの時が、今までの人生の中で1番幸せな時間だった。
あの日……永瀬とあいつを階段から突き落としたあの日から、今日でもう半年が経つ。
死んだと思ったのに、永瀬は死ななかった。
もともと重傷だった骨折は悪化、他にも数箇所の骨折、頭を強打したことによる意識昏睡状態が続いていたらしいものの、順調に回復し、明日から登校してくるらしい。
一方、あいつは未だに目を覚まさない。
打ち所が悪かったようで、あの日から今日までずっと意識不明のまま眠り続けている。
正直、永瀬が憎たらしくて憎たらしくて仕方がない。
何であいつが回復してるのか。
あいつこそ眠り続けてればいいのに。
そんなことを考えて、また溜め息が漏れる。
あの事は、確かに事件にはなったけど、俺罪に問われなかった。
あれは一緒に歩いていた永瀬とあいつが、2人でバランスを崩して転び、階段から落ちたということになっていた。
永瀬はなぜか俺に突き落とされたことを周りに言わなかった。
だから俺はただの第一発見者として扱われている。