この恋あきらめます
「もうさ。……言わない。逢いたいなんて……絶対に」
『か……ほ……?』
「ありがとね。司」
『おい。夏帆!?どうしたんだよ!』
焦りはじめた司に、少しだけ自惚れそうになる。
そのせいか、何故か私は笑っていた。
涙はまだまだ溢れているのに。
「最後に一つだけ。今日はね……。今日は、クリスマスで、私たちの……一年記念日だったんだよ」
司は返事をしなかった。
これで、彼が忘れていたわけじゃないことがわかった。
忘れてなかったことに嬉しくなったけど、わざと私を避けたという事も突きつけられた。
「でも、終わり。……弱くてごめんね。芹沢さんと仲良くね」
『っ!?かほっ。違っ────』
何かを言おうとする司を遮って電源を切る。
自分で仕掛けたくせに、最後に決定打を打たれるのが怖くてまた逃げた。
通話を切るだけじゃなく、電源まで下ろして。
かけ直してこなかったら辛いから。
自惚れてるわけじゃなくて、かかってこない時に立ち直れなくなる気がして。
そして、思いっきり走った。
苦しいのが、走ってるせいなのか出来事のせいなのか分からなくなるくらい我武者羅に。
自分の思いを振り切るように──。