この恋あきらめます
「夏帆。工藤くんさぁ……」
「分かってる。女の子と帰ってたんでしょ」
「あっ……。うん」
親友の真奈美が、気まずそうにこっちを見てる。
気まずくなるなら言わなきゃいいのに。
「大丈夫だから!」
「夏帆……」
だって、今に始まったことじゃない。
「昨日は、サッカー部でカラオケって言ってたから。多分、マネの子を送ったんだよ!司は優しいから」
「でも、昨日は部活が休みだから帰りにデートの約束って!」
「うーん。そうだったんだけどね。友達も大事でしょ」
当事者じゃない真奈美に圧倒されつつ、なんとか苦笑いで返事をする。
私たちだって、最初はそれなりなカップルだったと思う。
付き合い始めて一ヶ月めは、ぎこちないながらも恋人らしく一緒に帰ったり休みにデートしたりした。
照れたように笑った司をみて、もっと好きになったのを覚えてる。
でも、二ヶ月がすぎた頃くらいから、司は友達を優先しはじめた。
最初は「友達も大事にしたい」って言われて、それもそうだ。と自分を納得させた。
重いと思われたくなかったし、「ありがとう」と笑って初めてくれたキスも嬉しかったから。