この恋あきらめます


それでもまだ、私は余裕を持っていた。
逢えば「好きだよ」と言ってくれたし、キスもしてくれた。
時々だけど映画やショッピングにも出かけたから。

でも、ある時のサッカーの試合を見に行ってからそれが焦りに変わった。


その日、司には内緒で試合を見に行った私と真奈美。
真奈美は、私が頼み込んで渋々ついてきてくれたんだけど……。

内緒で行った手前、応援席で見るのは戸惑われて、少し後ろの木陰から覗くように応援してた。

結果。その試合は負けてしまった。
でも、その事より私が悲しかったのはマネージャーの芹沢麻子と司の行動だった。

片付けが終わって、司に声をかけようと探した。
落ち込んだ時の司の隠れ場所は知っていた。
必ず一人で校舎裏で頭を垂れてる。
きっと、その日もいるはずと思って急いで向かった。

でも、その先にいたのは司ともうひとりいたの。
もうひとり。司と抱き合ってる芹沢麻子が。


後から来た真奈美がそれを見て、怒鳴りに行こうとしたのを必死で止めた。

「なんで止めるのよ!」

「いいから。大丈夫だから。帰ろ」

「夏帆!これはいくら何でもひどいでしょ!」

「ありがと。真奈美。でも、良いから」


何とかなだめて真奈美の背中を押した。
真奈美の場所からは、分からなかったようだったけど
確かにあれは芹沢さんだった。
去り際、後ろを振り返るとまだ抱き合う姿に熱いものがこみ上げたけど。気付かないふりをした。

それが三週間前のこと。
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