*好きと言えない俺様王子*
「あの、今日日直だよね!掃除サボったら……先生に怒られちゃうよ!」

「……は?」

 予想外の言葉に俺は間抜けな声を出した。


 息を切らしながら走ってきたのは、前の席の赤澤椿だった。

 同じ中学で、何度か同じクラスになったことがあって覚えている。

 そして男子が可愛いと噂していたことも記憶に新しい。

 確かに可愛い。

 なのに化粧っ気がなく、校則通りの身だしなみを心がけている。

「えっと……掃除、しよう?あ、何か用事があるなら私が先生に事情を……」

 椿が口ごもりながら話していると

「えー!あんた真面目に掃除なんかしちゃってんの?」

「黒瀬君、掃除なんかあいつに任せて行こうよ」

 周りの女子が椿を嘲笑いながらバカにした。
 

< 11 / 71 >

この作品をシェア

pagetop