*好きと言えない俺様王子*
 でも少しして、私は自分の置かれている状況を整理した。

 黒瀬君と手が触れ合っている……!?

 しかもすぐ背後に黒瀬君!

 これって物凄い恥ずかしい状況じゃん、冷静に考えてみれば!

「あ、あの黒瀬君、椅子にのぼってやるからだいじょ……」

「ここは俺がやっとくから、お前は机拭いてろ」

 私の言葉を遮り、黒瀬君は言い切った。

「う、うん……」

 私は黒板消しから手を離した。

 ……少し、名残惜しい気がした。


 黒瀬君は少し強引だけれど、それは優しさからだって分かってるから。

 また、黒瀬君には助けられちゃったな。

 ――あの時みたいに。


 私は黒瀬君の代わりに机を拭きながら、ぼんやり感慨に耽っていた。
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