*好きと言えない俺様王子*
――パシャッ!

 私が体勢を崩したところで写真のシャッターが切られてしまった。

「お、おい……」

「わ!黒瀬君ごめん!なんか石につまずいて!」

「ったく、気をつけろよ」

 呆れられながらも、黒瀬君は仕方なさそうに苦笑した。

「う、ん……」

 黒瀬君の一挙一動、ちょっとした表情。

 その全てに動悸が高鳴るから、心臓に悪いや。

 黒瀬君と話していると心拍数が倍以上になりそうだ……


 後ほど知ったことだけれど。

 プリントされた写真を後日翠から受け取ると、黒瀬君と私が密着した写真に仕上がっていた。

 私がそれを生徒手帳に挟んで一生の宝としていることを、その時の私はまだ知らなかった。
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