*好きと言えない俺様王子*
「ふぅ……ってあれ?まだ皆いない……?」

 公衆トイレをいち早く出たのは私らしく、まだ誰もいなかった。

 まぁいいや、待っていよう。

 そう思った瞬間だった――……

 黒塗りの車が私の前で停車したかと思うと

「大人しくしてろ」

「!」

 背後から口を塞がれる。

 車のドアが開けられ、私はそこへ強い力で押さえつけられる。

 ダメだ、サングラスとニット帽で顔が見えない!

 それと同時に、男子トイレから黒瀬君が出てくるのが見えた。

「ふ、ふろふぇふ……っ!(く、くろせく……っ)」

「つ、椿……!?」

 黒瀬君が私の方へ向かってくるけど、時既に遅し。

 バタンとドアが閉められ、エンジンがかかる。

「赤澤……!?」

「椿!?」

「椿ちゃん!」

 後から出てきた浅黄君や翠、桃川ちゃんの声が聞こえてきた。

 そしてあっという間に車は動き出した……
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