*好きと言えない俺様王子*
<颯side>

 気づけば俺は、思いっきり椿を抱きしめていた。

 ――無事で良かった。

 とにかくその思いでいっぱいだった。

「黒瀬君……怖かった……怖かった……っ!」

 顔は見えないけど、泣いているのは分かる。

「またあの時みたいなこと、されちゃうと思ったの……でもまた、黒瀬君が助けてくれて……ありがとう」

「あぁ……無事で良かった」

 しばらく抱き合っていたけど、これってすっげー恥ずかしい状況じゃね?

 鼻腔をくすぐる香り、細い腰、そして何か柔らかいのが当たって……

「……っ!」

 そうだ、こいつは……

「悪い。早くその……服、直せ」

「へ?あ、うわあああぁっ!?」

 青原のやつに服を脱がされかけていたんだった。

 それを俺は抱きしめていたわけだ……

 水色の……ってダメだ、忘れろ……!

 乱れた服、泣いていたのかうるんだ瞳、紅潮した頬……危うく理性が……


 つーか青原の野郎、ぜってーに許さねー!


 もう一発殴ろうとしたけど、警察が来たのでやめておいた。
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