*好きと言えない俺様王子*
 1時限目の数学Ⅰ終了後、すぐに翠に捕まった。

「どういうこと椿……黒瀬君がいながら!」

「うわあああぁ落ち着いて!翠!」

 私は青筋立てる翠をたしなめながら言った。

「少しずつだけど思い出してきた。確か……」


 10年前ーー……

 里紅君と私の両親は仲が良く、買い物などもしょっちゅう一緒に行っていた。

 私と里紅君の仲が良いのも、親の付き合いという部分もあった。

 ある日、スーパーのお菓子コーナーだったかな。

 ラムネ入りのおもちゃの指輪があったんだ。

 プラスチックの軽い指輪で、2つセットになって入っていた。

 一つは明るい赤色、もう一つは真紅に近い色だった。
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