気付いた時には2人の君が・・・
プレゼント
次の日。月曜日。休みが終わってしまったという寂しさと、また週が始めるという気だるさのなか今日も今日とて学校へ向かう。
呪文のような意味のわからない授業をおえ放課後。
「やっと授業終わった」
「今週もまた頑張らないとね」
帰り道の会話。これが毎日の中で唯一安らぐことのできる空間になりつつある。
「そうだよね、次の土日まで頑張らないとね」
憂鬱な月曜日でさえ、彼女と会話が出来るだけで嬉しくなってきたかもしれない。
「少し公園によってもいいかな。渡したいものがあるんだ。」
「いいよ」
僕たちは家までの道を外れ公園に向かう。あの時の公園。告白をしたあの時の公園。
1日の疲れと、彼女と一緒にいることの幸福感とで、遅い足取りながらも、苦に感じることなく歩いた。
公園には程なくしてついた。日も暮れはじめ、既に公園に人はいなくなっていた。
僕は背負っていたバッグをベンチに置き渡したいものを探す。小さい袋に入っているそれを手探りで探し当てる。
「はい、これ。プレゼント」
そういって手渡したのはヘアピン。袋は2つ持っているんだけどその内の片方を渡した。
「ありがとう。でもどうして?」
「似合うかなと思ってこの前買ったんだ」
「ありがとう」
ぎこちないけど一生懸命笑っている彼女の顔はとても可愛らしかった。
僕はもう一つのプレゼントを渡さなきゃいけない。渡すためには彼女を驚かせないといけなかった。
だから、僕はそっと彼女の体を抱きしめた。
「…恥ずかしいんだけど」
久しぶりに聞いた桜野さんのようで違う声。はきはきしたその声で入れ替わったことが分かった。
「ごめん、こうすれば入れ替わるかなって」
密着していた体を離し距離をとる。
「はい、これプレゼント」
「私に?」
「うん」
「本当に?ありがとっ」
屈託のない笑顔。無邪気な彼女もまたとても可愛らしかった。
このときから、いや正確にいうと少し前から僕の決意は揺らぎ始めていた。

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