七瀬さんは天使なペテン師
始まりは
俺の名前は、千歳 瞬(ちとせ しゅん)。
今日から、私立緑坂学園高等学校、通称「緑坂」の高1になる。
真新しい制服に身を包み、中学とは違う通学路で入学式に向かう。
緑坂は、高校の名前の通り木が多いうえに高校は長い長い坂のてっぺんにある。買ったばかりのローファーは、足にフィットしなくて靴擦れしそうだ。
それに、今は、春だから桜並木が綺麗で中々眺めもいいが、夏になったら汗をかかずにこの坂を登り切るのは無理だし、虫が多そうだ…。
俺は、やっとその坂を登り切り、毎日この坂を登って登校かよとウンザリしながら、校門をくぐった。
「しゅーん!」
いきなり声がしたかと思うと、後ろからバシッと背中を叩かれる。
「うわっ!」
自分でも思ったりより、間抜けな声が出しながら、振り返ると中学から同じ、羽山 北斗 (はやま ほくと)だ。
こいつは、悪いやつじゃないんだが、とりあえずテンション高くて、いかにも思春期の男子高校生の代表のようなアホさと前向きさと、モテたいという強い気持ちを兼ね備えている。
まー、女子からは、「黙っとけば、かっこいいのに喋った瞬間から無理だわー。」と陰口を言われてるのを聞いたことがある。確かに顔はイケメンなのに本当に残念な奴。
「お前、俺と同じクラスだぜ!!嬉しいだろ?」
坂をのぼりきったばかりで、暑い俺の肩を無理やり組んできて、大きめな声でニコニコ喋りだす。
うん。ウザい。
「なんだよ!その嬉しくなさそうな顔は!」
北斗は、膨れながら文句を言ってくるのを、俺は、華麗にスルーし二人で教室に向かう。