離れていた10年。
この時間が苑輝様とリーリュアにとって必要だったのでしょう。
10年前なら、
自分の血を呪う苑輝様が妻帯することはなかったでしょう。
リーリュアも、英雄である人をただの人間として受け入れられたかどうか。
けれど10年経って、歳の差がすれ違いを呼びます。
「恋に年齢は関係ない」そう思うのは若いからです。
歳を重ねると色々なものが見えてきます。
昔は想像さえできなかった「死」も、考えるくらいには。
それで、真っ直ぐで可愛らしいリーリュアの想いに簡単には応えられません。
けれど、悩む人であってほしい。
躊躇う人であってほしい。
それが想いの大きさで、誠実さだからです。
自分こそが彼女に相応しい
誰にも渡さない
そんな傲慢な言葉は言えません。
誰よりもリーリュアの幸せを願っていればこそ、言えません。
これは大きいけれど、静かで切実な溺愛です。