あじさい少女
そしてまた今日も、愛が目を覚まし、ベッドの上で無意味に寝そべっている時だった。
「朝食です。きちんと食べてください」
カタン
愛は横になったまま、横目でトレーを見ると、あじさいが無いことに気付いた。
そしてゆっくり、紫色の小さな口を開いた。
「あじさい…今日はないんですね」
愛の
精一杯のか細い言葉だった。
「あじさいも無限にあるわけではありません。すべての物には限りがあります」
少年はその答えに淡々と喋った。
「限り…ですか」
愛はまた、ベッドの上で人形のように寝そべって聞いた。
「はい」
"限り"
愛はなぜか、胸が苦しくなった
「愛さんだってそうです。限りがあったんですよ」
「それは…私の…何に、ですか?」
「すべてにです。家族への不満、勉学、窮屈な思い、縛られるような生活の束縛」
愛は、はっとした。
すべて
自分が気付かずに思っていることだった。