あじさい少女
それからはもう、食事や洗濯物を運ぶこと以外は
誰も愛の部屋に近づくことはなかった。
この広いお屋敷の中で
愛は役に立たなくなった
愛は
"なかったモノ"
としての扱いを受け続けた。
「お食事でございます…」
今日も恐る恐る、使用人が食事を持ってやってくる。
それもドア以外に廊下と部屋を繋ぐ、小さな窓から。
食事を置くと使用人は、逃げるように帰った。
愛の体は痩せ細り、食事も三日に一度しか食べない。
食べたとしてもほんのひとくち。
あの初めてカギを掛けた日から、
二ヶ月。
お風呂場、トイレもすべて付いてるこの広い部屋では
外に出なくても生活できた。
それゆえ
カギは一度も開けられることはなかった。
荒れた部屋でただ一人、奥で座っている娘、愛。
その表情は虚ろになり
キレイだった目は、ぼやけ
赤い唇は紫色になった