闇に紛れてキスをしよう
◆
◇
◆
「ごめん、おれのせいだわ」
「はぁっ!?…悟くんさ、危機感薄過ぎ…」
「いやぁ~、煙草友達欲しくってさ~」
「だからってココ教えなくてもいいでしょ…」
へらへらっ…と笑った田中さんは、表情とか雰囲気とかはいつもの「癒しの田中さん」そのものなのに。
着ている服は、いつものよれよれスウェットなんかじゃなくて…全身真っ黒の…なんていうか、闇に紛れて見えにくい服というか…。
まるで今からどこかで戦闘でもするんですか?みたいな、映画でしか見た事の無いような服装をしていて……って、あれ…?
「……あの、悟くんって」
「……あはは~」
「田中さん…以前、ヒロシだって言って…」
「……あれ~?そうだったっけ?」
はぁ…と坂井さんが溜息をついて、口元を掌で擦りながら隠していて。
そんな坂井さんを見上げる田中さんは、申し訳なさそうに眉毛を下げていた。
「ところで三上さん…だっけ?」
「え、あ、はい!」
「……キミは何を見て何を聞いたのかな?」
「……え」
口元に手をやったまま私に向いた坂井さんの視線は、それはもう冷たい以外の何物でもなくて、勝手に体がブルリと震える。
カチャ…と音を立てて直された銀縁の眼鏡も、その冷たさを際立たせていて、自分が見て聞いてしまった事は相当ヤバいというのが窺い知れた。
「……ちょっと落ち着いて話そうか」
「え!ちょっと修ちゃん!」
「……なに」
坂井さんは私を見たまま、私からは見えない位置から聞こえてきた声に返事をした。
しかもその声は、さっき聞こえてきた声のうちのひとつで、残念ながら…その声にも聞き覚えがあって…。
「まさか連れてくとか言わないよね?」
「他にどこで話すの」
「そりゃあ…修ちゃんのオフィスとか…管理人室でも良くない?」
「電気なんか点けたら、どっちも誰かが来る可能性がある場所でしょ…それは避けたいんだよね」
スッ…と壁の向こうから姿を現して、坂井さんと話を続けていた3人目の人は…。
「……どうも」
「……西野先生」
「アナタもさ、ツイてないよね」
「B.C. square TOKYO」の4Fにある「西野メンタルクリニック」の院長先生だった…。
◆
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「ごめん、おれのせいだわ」
「はぁっ!?…悟くんさ、危機感薄過ぎ…」
「いやぁ~、煙草友達欲しくってさ~」
「だからってココ教えなくてもいいでしょ…」
へらへらっ…と笑った田中さんは、表情とか雰囲気とかはいつもの「癒しの田中さん」そのものなのに。
着ている服は、いつものよれよれスウェットなんかじゃなくて…全身真っ黒の…なんていうか、闇に紛れて見えにくい服というか…。
まるで今からどこかで戦闘でもするんですか?みたいな、映画でしか見た事の無いような服装をしていて……って、あれ…?
「……あの、悟くんって」
「……あはは~」
「田中さん…以前、ヒロシだって言って…」
「……あれ~?そうだったっけ?」
はぁ…と坂井さんが溜息をついて、口元を掌で擦りながら隠していて。
そんな坂井さんを見上げる田中さんは、申し訳なさそうに眉毛を下げていた。
「ところで三上さん…だっけ?」
「え、あ、はい!」
「……キミは何を見て何を聞いたのかな?」
「……え」
口元に手をやったまま私に向いた坂井さんの視線は、それはもう冷たい以外の何物でもなくて、勝手に体がブルリと震える。
カチャ…と音を立てて直された銀縁の眼鏡も、その冷たさを際立たせていて、自分が見て聞いてしまった事は相当ヤバいというのが窺い知れた。
「……ちょっと落ち着いて話そうか」
「え!ちょっと修ちゃん!」
「……なに」
坂井さんは私を見たまま、私からは見えない位置から聞こえてきた声に返事をした。
しかもその声は、さっき聞こえてきた声のうちのひとつで、残念ながら…その声にも聞き覚えがあって…。
「まさか連れてくとか言わないよね?」
「他にどこで話すの」
「そりゃあ…修ちゃんのオフィスとか…管理人室でも良くない?」
「電気なんか点けたら、どっちも誰かが来る可能性がある場所でしょ…それは避けたいんだよね」
スッ…と壁の向こうから姿を現して、坂井さんと話を続けていた3人目の人は…。
「……どうも」
「……西野先生」
「アナタもさ、ツイてないよね」
「B.C. square TOKYO」の4Fにある「西野メンタルクリニック」の院長先生だった…。
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