前途多難な恋物語

『土曜はデーゲームだから終わったらみんなで晩飯食おう』

「うん」

『本当は二人きりがいいんだけど仕方ない』

「ほんと、ごめんなさい」

『陽菜ちゃんが謝ることなんて何もないよ。久しぶりにおじさんと志織さんに会えるのも楽しみだし』

「……」

えっと…私も毎日電話やLINEで連絡は取り合ってますが暫く会ってませんよ。

『ククク…陽菜ちゃんひがまない』

「えっ?」

『俺達も会ってないのにって思っただろ?』

「……」

どうして分かるの?

『ハハハ…陽菜ちゃんのことなら何でも分かる』

「は、隼人お兄ちゃん!」 

あ~恥ずかしい。 

『ククク…ハハハ…』

スマホの向こうで大笑いしてるし。
 
ほんとに、もう!

『4月に陽菜ちゃんに会えるのを楽しみに頑張るか』

漸く笑いが治まったみたい。

昔から『陽菜ちゃんは俺のツボ』って笑うんだけど、私は何も面白いことなんてしてないんだけど。

私にとって隼人お兄ちゃんって言ったら真っ黒に日焼けしていつも笑ってるって子どもの頃からのイメージ。

だけど野球、とりわけ試合になると凄く厳しい顔になる。

だから小さい時はもしかしたら隼人お兄ちゃんは分身の術が使えて野球をやってる隼人お兄ちゃんと普段の隼人お兄ちゃんといるんだと思ってた。

それを言ったら大爆笑されたけど。

フフッ、懐かしい思い出。


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