前途多難な恋物語
「フフフ…」
『ん、何かおかしいか?』
あ、声に出して笑っちゃった。
「ううん、何だか小さい頃のことを思い出して。ほら、隼人お兄ちゃんいつも私のことを笑ってたから」
考えたら失礼な話しなんだけど。
『あぁ、そうだったな。あの頃から陽菜ちゃんは俺の癒しだったもんな』
「単なるおもちゃだったんじゃない?」
隼人お兄ちゃんや悠ちゃんやお兄ちゃんにとっては。
『ハハハ…そのおもちゃが今では一番大事な女性(ヒト)になっちまった。運命なんて分かんないもんだな』
隼人お兄ちゃんにとって私は『一番大事な女性(ヒト)』
『陽菜ちゃん、どうした?黙りこんだりして』
「ううん、今の言葉」
その先が口に出ないよ。
『一番大事な女性…俺にとっての』
「……」
『恥ずかしいのか?それとも感動したか?俺っていいこと言うよな』
ほら、また茶化すんだから。
せっかく人が感動の余韻を噛み締めてるのに。
「もう、隼人お兄ちゃんは!恥ずかし気もなくよく言えるね」
『ば~か!恥ずかしいに決まってんだろ。だけど電話だから顔が見えないからこんな臭い台詞も言えるの』
「フフフ…そうなんだ。顔が見えないもんね。ね、今度は面と向かって言ってよ」
『ハハハ…そんなことしたら陽菜ちゃん真っ赤かになるだけだろ』
フフフ…たぶんそうだろうな。
そんな甘いシチュエーションに慣れてないもん。
なんたって私は恋愛初心者なんだから。