前途多難な恋物語
『だけど陽菜ちゃん』
「うん?」
『俺、本気で思ってるから。陽菜ちゃんのことを』
「……」
ちょっとハスキーな声でこんなことを言われたら
『ククク…真っ赤か!』
「は、隼人お兄ちゃん!」
バレてるし。
「も、もう切るよ」
『ハハハ…ごめんごめん。もう遅くなったな』
「うん、明日もオープン戦あるんでしょ?もう休まないと」
『ん。オープン戦で頑張らないとレギュラー下ろされるからな』
「そんなこと」
チームで不動のショートじゃない。
『そんなことあるんだよ。俺達の世界は何年やってても競争なの。名前より実力が物を言う世界なんだから』
「……」
『ごめん。陽菜ちゃんにこんな話しをして』
「う、ううん」
『でも陽菜ちゃんには知っててほしいんだ。俺のいる世界のことを、俺を』
「隼人お兄ちゃん…うん、嬉しいよ。隼人お兄ちゃんの世界のことを教えてもらえて」
それだけ私を身近に感じてくれてるって、信頼してくれてるってことだよね。
だから厳しい世界に生きる隼人お兄ちゃんの休息の場所になりたい。
『ん。やっぱり陽菜ちゃんは俺が選んだだけのことはある』
「なに、それ?私が隼人お兄ちゃんを選んだんだからね。忘れないでよね」
『はいはい、分かってます』
「フフフ…」
『ハハハ…』