前途多難な恋物語

「恭介さん、あの時に言ったじゃないですか」

「なにを?」

確かにあのあと隼人お兄ちゃんを見送って部屋に戻ったらパパ寝ちゃってたわ。

覚えてるわけないわよね。

「隼人君に『陽菜を嫁にもらわんか』って」

「は、はぁ!?俺がか?いや絶対そんなこと言ってない」

語気を荒げて否定するけど

「パパ言ったんだよ。そうしたら隼人は息子になるし、それに」

このあとのことはちょっと私からは…

「隼人君と陽菜の子どもなら運動神経がいいし凄い選手になるって。ね、陽菜」

「う、うん」

ママはまるで鬼の首を取ったようににんまりと。

対照的に

「そ、そんなことは絶対に言ってない!隼人がドラフトの時はまだ陽菜は中一くらいのはず。ありえないだろうが!お前ら話しを作ってる」

赤くなったり青くなったりついにはまたまた逆ギレしたようで

「もう寝る!」

リビングを出てドアを閉める前に振り返り

「いいか!まだ結婚は認めんからな」

と言い捨ててドアを勢いよく閉めた。

「誰も結婚するなんて言ってないけど」

まだプロポーズもされてないよ。

「いつまで経っても娘馬鹿なんだから」

やれやれとばかりにママが溜め息をついた。

「だけどママ大丈夫?」

「なにが?」

「またパパに苛められない?」

大人げなくママに八つ当りするんだから。

「フフフ…大丈夫よ。それに恭介さんだって分かってるんだし。ああ見えても恭介さんは隼人君を認めてるのよ。陽菜を任せられるのは隼人君だって」

「…」

そうかしら?

そう思うのはママの欲目じゃないのかな。


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