前途多難な恋物語
「パパ、晩御飯出来たわよ」
「ん」
相変わらず全て『ん』で済ますんだから。
リビングからダイニングに移り
「しょうが焼きか」
「えぇ。陽菜が食べたいって朝にリクエストしてたから」
「相変わらず肉好きな奴だな」
「パパの娘ですから」
パパにビールを注いで
「ママも飲む?」
「そうね、もらおうかしら。陽菜は?」
「うん、じゃあもらおうかな」
ママにビールを注いで、そして注いでもらい
「お疲れさま」
私が20歳を過ぎてからこうして晩御飯の時にビールのお相伴をするようになった。
パパは『まだ早い』って文句を言うけどママに言わすと『口ではああは言ってるけど本当は陽菜と飲めて嬉しいのよ』って。
確かお兄ちゃんが20歳過ぎて飲めるようになった時も同じことを言ってたのよね。
ほんと、パパって素直じゃないんだから。
ま、それがパパらしいって言えばらしいんだけど。
食べてる間も私とママが喋るだけでパパはたまに『ん』と相づちをうつだけ。
隼人お兄ちゃんのことは何も言わない。
先週の私の21歳の誕生日に隼人お兄ちゃんからバースデープレゼントとしてお花が贈られてきた時は御飯の間中嫌味を言ってたのに。
今は嵐の前の静けさかしら。
せっかくのしょうが焼きも味がよく分からないような気がしてきた。