前途多難な恋物語
「パパ、見て」
お風呂から上がりリビングでスコッチを飲みながらニュースを見ているパパの横に座る。
「ん?」
「隼人お兄ちゃんにもらったの」
「あら、可愛い。アクアマリンね、陽菜の誕生石の」
ミルクティーを持ってきてくれたママが嬉しそうな顔でペンダントを見ている。
「うん」
「誕生石って、気障なことをする奴だ」
「……」
やっぱり言うと思ったのよ。
誕生日のピンクの薔薇の花束にも『年の数の薔薇か。アイツはこういうことに慣れてるな』とかめちゃめちゃ隼人お兄ちゃんをけなした。
本当に大人気ないんだから。
「フフフ…恭介さんだって私の誕生日や記念日に誕生石のアクセサリーくれたじゃないですか」
「俺と隼人は別だ。俺は結婚してから」
「そうですよね。結婚するまでほとんど付き合ってなかったし、初めてもらったのはエンゲージリングとマリッジリングですもんね」
「なんか文句あんのか?」
パパの片眉が上がってる。
これも先週と一緒。
この二人のやり取りは見ていて面白いんだけど今はそれどころじゃないのよ。
「ね、パパ」
「ん、何だ?」
「隼人お兄ちゃんの試合観に行かない?」
「試合?いつ?オープン戦か?」
隼人お兄ちゃんが私と付き合ってるのは面白くなくても野球は好きだし、なんやかや言っても隼人お兄ちゃんのことも昔から好きなんだもんね。
「陽菜?」
「うん。このペンダントと一緒にチケットも送ってくれたの。ほら」
4月初めのホームでの試合のチケットを送ってくれた。
「本拠地か。関西だな」
チケットを見て
「土曜のデーゲームか。日帰りで来いと言うのかアイツは!偉そうに」
「恭介さん」
「日帰りじゃなくて二泊だよ。金曜日、パパとママは仕事終わって来てくれたらいいの。ほらホテルも予約してくれてるの」
ホテルの招待券もパパに渡す。