そろそろ恋する準備を(短編集)
ご一緒に恋はいかがでしょう
【ご一緒に恋はいかがでしょう】
「いらっしゃいませご注文をお伺いしま、……」
「来ちゃった!」
「ごめん、結衣ちゃん」
「……」
バレー部に所属する七峰くんと付き合い始めて数ヶ月。
学校近くのファストフード店でアルバイトを始めて一ヶ月。
仕事にも慣れて来た頃、知ってる顔がやって来た。
七峰くんと、同じクラスの戸神。
元気が取り柄のバレー部主将戸神はいつも通りへらへらにこにこしていて、七峰くんはいつも通り優しい表情だった。
「……なにやってんの、部活は?」
「今日体育館使えなくてさあ、結衣ちゃんここで働いてるって聞いて!」
ばらしたな七峰くん……という視線を送ると、ナチュラルに目を反らされた。
それにしても恥ずかしい。知り合いに、しかも恋人に働いている姿を見られるというのは、こんなに恥ずかしいものなのか。
くそう……これはしばらく戸神にからかわれるなあ。ていうか、わたしと七峰くんをからかうために来たのか……。戸神ほんとやだ!
「俺、フィッシュバーガーのセットね! 飲み物はコーラ! 七峰は?」
「烏龍茶。Mで」
「あとスマイルもくださーい!」
「それではご注文繰り返します、フィッシュバーガーセット、お飲み物のコーラがおひとつ、烏龍茶のMサイズがおひとつ」
ご所望のスマイルで注文を繰り返すと、さっき目を反らした七峰くんの視線が戻ってきた。なんだかすごく恥ずかしい。ああ、七峰くんかっこいい。
「……お客さま、フィッシュバーガーのフィッシュはグッピーでよろしいですか?」
「よろしくないです……!」
「それではエンゼルフィッシュバーガー、つゆだくでよろしいですか?」
「やめて!」