そろそろ恋する準備を（短編集）

そろそろ恋する準備を

【そろそろ恋する準備を】




　うちの高校の学食と購買はとても充実していて、オリジナルの限定メニューも多数存在する。

　例えば「おばちゃんの気まぐれ定食」は月に一度、いつもの値段で豪華なメニューが揃っているけれど、いつ、何食分登場するかは分からない超希少種。
　ふかひれスープや牛タン定食は月に一度の人気メニュー。

　その他にも、たくさんのフルーツが挟んである「ロングロングロングアイランドパン」や、ドラゴンフルーツとプリンが練り込まれた「ドラゴンプリンメロンパン」、十勝和牛と今帰仁アグーのお肉をメインに全国各地の野菜を挟んだ「列島縦断サンドイッチ」など、どれも月に限定数個のレア商品だ。

　それらが登場する日の学食や購買は、まさに戦場。手に入れることができれば英雄だ。


　わたしはその中でもドラゴンプリンメロンパンが大好物で、毎月手に入れることに全てを捧げている。四時限目終了十分前には臨戦態勢に入り、代金を握り締める。そしてチャイムと同時に購買にダッシュする。おかげで足がちょっとだけ速くなった。


　そんな毎月の楽しみ、大事な大事なドラゴンプリンメロンパンを奪い、抗議する間もなく食べてしまった山ノ内に飛び蹴りをしたら、やつは派手に吹き飛んで、今階段を上って来たばかりのしののめくんにぶつかって、ふたり仲良く転げ落ちていった。とさ。