偽りの先生、幾千の涙
「花音ちゃん、大丈夫?」
私が動くと道を開けてくれる彼女達のおかげで、私はすぐに花音ちゃんの元へ行ける。
「果穂ちゃん、おはよう。
全然大丈夫だよ。」
そう言って、ヘラヘラ笑っているのは国木田花音(クニキダ カノン)ちゃんだ。
花音ちゃんは父親が警察庁の偉い人で、母親が私の父親の経営している会社の顧問弁護士をしている。
古い付き合いで、世に言う幼馴染みというものにあたる。
本音を言うと、私は友達だとは思っていないけど、花音ちゃんは私を幼馴染みの友人と思っているらしい。
ドジなのかよく転けたり、忘れ物多かったり、他にも色々やらかす子だけど、今周りにいる人達みたいに媚びへつらわないから、どちらかと言うと好きな方だ。
「気を付けてね。
女の子なのに、顔に傷でも付いたらどうするの?」
「そうだよね。
気を付ける。」
まだ笑っている花音ちゃんが反省しているのかは分からないが、まあいい。
問題はこの後だ。
「果穂様!
今日の始業式の後に合唱部の発表があるのですけれども、伴奏をお願い出来ませんか?
ピアノの方が休んでしまって。」
「私でよければ。
朝のうちに楽譜はいただけますか?
予め見ておきたくて。」
「勿論ですよ!
すぐに教室にお持ちします。」
「じゃあ私も早く教室に行きますね。」
今日も取り巻きからお願いされる。