偽りの先生、幾千の涙
今更ながら、良心が俺に問い掛ける。
今やっている事を後悔する時がいつか来るのではないかと。
後悔する時は来るのかもしれない。
人助けとは真逆の事をしているわけで、決して褒められた事ではないのだ。
しかし、中途半端にここで止める事は出来ないし、それこそ後悔するに決まっている。
父さんと海斗を裏切るなんて…俺の中のもう1つの心が猛反対する。
俺にとって最も大切なものは何か、自分自身に問いかけると、考える間もなく家族の顔が浮かんだ。
父さんはとっくの昔に腹を括り、海斗だって覚悟を決めたのに、俺が揺らいでどうするのだ。
俺は自分の頬を叩いて目を覚まさせる。
生温い正論なんて意味はない。
大事なのは信念だ。
俺は海斗からの連絡を待った。
今度は逆に早く電話が掛かってきてほしいと時計を見る。
スマホが鳴ったのはそれから10分後の事だった。