偽りの先生、幾千の涙
俺は国木田花音ちゃんの後を付けた。
花音ちゃんが向かったのは個別指導も行っている大手予備校のビルの中だった。
電話で言っていたように、ちゃんと予備校に通っているのかと感心してから、俺は今後どうするか考えた。
ささっとラインかメールで兄さんに連絡出来たらいいんだけど、この復讐に関する事は書面やデータで残るような連絡手段は取るなって父さんに言われているからな…
だからって、兄さんが調べられてるって誰かに聞かれていたら不味いし…どうしたものか。
考えながら、国木田花音が入った教室を確認する。
建物には入る事が出来ても、一緒に授業を受けると余所者だとバレる。
だからって、今更引き帰すのも悔しいし…どうしたものか。
俺は廊下に凭れかかりながら、考える。
すると、思いも寄らない事が起こった。
「あの…大丈夫ですか?
教室の場所が分からないんですか?」
その声に俺は顔を上げる。
国木田花音ちゃんが俺の前に立っていた。
「え?
ああ、俺?
そうじゃねえけど…ダチが忘れ物してさ!
それで、そいつがここの予備校に通ってるんだけど、渡したくて。
でもそいつ、全然連絡取れねえし、どうしようか考えてて。」
俺は適当に嘘を吐く。
そして気付いた。
俺の恰好があの日と全然違う事に。