偽りの先生、幾千の涙
「ミステリアスっていうわけじゃないけど…えっと…何て言えばいいかな…謎が出てきたって感じかな。
伊藤先生って…王子様みたいな感じの人で、生徒から凄く人気があるの。
でも…あたしはよく分からないんだけど、伊藤先生を不自然に感じている友達がいるの。
何が不自然なのか、あたしにはよく分からなかったんだけど、それで、あたしの周りの人に頼んで、伊藤先生についてちょっと調べてもらったんだけど、確かに不自然なところがあるというか…変なところがあるというか…ごめんね、あたしも何言ってるのか分からなくなってきた。
でもとにかく、何か事情があるのかなって。」
…それであの会話というわけか。
どうする、兄さん?
かなりボロが出てきている感じだよ。
それにしても、王子様とは笑える話だ。
学校でも兄さんがどんな感じなのか、一回見てみたい。
「不自然…嘘を吐いてるとか?」
「うーんと、あたしも詳しい事分からないから、何とも言えないけど、そんな感じ。
って言っても、まだ嘘を吐いているかもしれないって段階なの。
だから確かな事じゃないんだ。」
言葉の続きが見つからないのか、花音ちゃんは腕を組んで悩み始めた。
さっきの勢いは何処へ行ったのか、頭で一生懸命考えている事がよく分かる。
色んな事が分かっている俺からしたら、滑稽で仕方がない。
俺は見ているのも暇だから、後ろを通った店員に声を掛ける。
「すいません、バニラアイスを2つお願いします。」
注文すると、花音ちゃんが心配そうな顔でこっちを見てきた。
「どうしたの?」
「アイス、2つも食べたらお腹壊さない?」