偽りの先生、幾千の涙
「俺一人で2つも食べないって!
俺と花音ちゃんの分。
アイスは俺の奢り。」
「そんなの悪いよ!」
「いいって。
俺が注文したんだし。
それよりその先生、胡散臭いな。
あんまり近付くなよ。」
この報告が明日に榎本果穂に伝わるとしよう。
学歴詐称だと学校中に広まる可能性はあるが…まだかな。
榎本果穂って、すぐに皆に広めるっていうより、弱みを握ったまま外堀を埋めていきそう。
一番厄介というなか、面倒な事になりそうだ。
「うん。
でも担任の先生なんだ。
それに…何か隠したい事があるのかもしれないけど、悪い人じゃないと思うの。」
花音ちゃんもかなり面倒な子かもしれない。
事の重大さが分かってないというか、温室育ちのお嬢様の悪い面が出てきている。
俺が言えた義理じゃねえけど、もっと他人を疑うべきだ。
その点は榎本果穂を見習ってほしい。
「悪い人の可能性、高いと思うけどな。」
「そうかな?」
「そうだよ。
…俺、その伊藤先生のことは全然知らねえけど、ちょっとでも疑わしいなら、疑わないと。」
兄さんの邪魔をする気はないけど、口は勝手に動く。